統合失調症

統合失調症のよくある症状

  • 誰もいないはずなのに不快な内容の声や音がはっきりと聞こえる
  • 周囲の人が自分に嫌がらせをしていると思い込み常に警戒する
  • 自分の考えが他人に知られている、または他人の思考が自分に入り込むように感じる
  • 自分の体や行動が誰かに操られているような感覚を抱く
  • 急に人と会うのを避けるようになり、引きこもりがちになる
  • 集中力が続かず、日常の作業や仕事が思うように進まなくなる

統合失調症とは

統合失調症は、思考や考えがまとまりにくくなり、現実との区別が曖昧になる状態が長期的に続きます。幻覚(聞こえていないはずの声が聞こえるなど)や妄想(他人に悪口を言われていると確信してしまうなど)といった症状を中心に、さまざまな症状が現れる病気です。
周囲との交流が減少し、引きこもりがちになるなど、生活面での支障もみられるようになります。かつては「精神分裂病」と呼ばれていた病気です。

統合失調症の有病率

統合失調症は約100人に1人がかかると言われており1)、約1%前後がかかるとされる誰にでも発症の可能性がある病気です。治療開始が早いほど症状が重くなりにくいと言われており、早期発見と早期治療が大切です。

統合失調症の原因

統合失調症の原因は明確には解明されていませんが、複数の要因が組み合わさることで発症すると考えられています。主な要因として、以下の3つが挙げられます。

  1. 1.遺伝的・生物学的要因

    • 脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)の働きの異常が関与しているとされます。
    • 遺伝的素因も一部関係があると言われ、血縁者に統合失調症の方がいるとリスクがやや高まると報告されています。
  2. 2.心理的要因

    • 対人関係のストレスや、過去のトラウマ、強い心配・不安などが、症状を引き起こすきっかけになる場合があります。
    • 真面目でストレスをため込みやすい性格傾向が、発症リスクを高めることもあります。
  3. 3.社会的要因

    • 職場や学校、家庭などでの過度なプレッシャー、孤立感や居場所のなさなどの環境要因が重なり、精神的負担が増大すると発症しやすくなると考えられています。
    • 自立や人間関係が急激に変化する時期(例:思春期、社会人になりたてなど)に症状が顕著になりやすい傾向があります。

統合失調症の詳しい症状

統合失調症の症状は大きく分けて「陽性症状」と「陰性症状」と呼ばれる2つの側面があります。

  1. 1.陽性症状(幻覚・妄想など)

    現実には存在しない声が聞こえる「幻聴」や、事実ではないことを強く信じ込んでしまう「妄想」などが特徴的です。嫌な言葉や悪口が聞こえてくる場合、自尊心が大きく傷つき、対人関係や社会生活に支障をきたしやすくなります。

  2. 2.陰性症状(感情や意欲の低下など)

    意欲が低下して外出や人との交流を避ける、感情の起伏が少なくなる、何事にも興味や関心を示しにくくなるなどの症状が挙げられます。周囲からは「怠けている」「やる気がない」と誤解されがちですが、本人にとっては大きな苦痛であり、日常生活が難しくなる場合もあります。

症状が悪化すると、引きこもりや対人恐怖が強まることが多く、治療のタイミングを逃すと社会復帰へのハードルが高くなる傾向があります。反対に、早期の治療介入によって、再び社会生活を維持できる状態に回復することも可能です。

統合失調症の診断

統合失調症の診断は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)などのガイドラインにもとづき、主に以下の点を総合的に評価します。

  • 幻覚や妄想などの陽性症状の有無・持続期間
  • 陰性症状がどの程度続いているか
  • 症状が6ヶ月以上継続しているか
  • 他の精神疾患や身体疾患による症状ではないか

統合失調症は、症状の変化や程度を慎重に見極める必要があります。経過が長くなるケースが多いため、統合失調症を熟知した精神科診療を専門とする医師のもとで、継続的な診察・観察を行いながら診断を確定していくことが望まれます。

統合失調症の治療

統合失調症の治療は、主に薬物療法とリハビリテーション(心理社会的支援)を組み合わせて行われます。

  1. 1.薬物療法

    抗精神病薬(非定型抗精神病薬など)を中心に、妄想や幻聴などの陽性症状を抑え、陰性症状の改善を図ります。現在ではさまざまな新薬が開発されており、副作用を軽減しつつ症状をコントロールできる選択肢が増えています。
    当院では院長が本人と相談しながら、症状や生活状況に合ったお薬を提案いたします。

  2. 2.リハビリテーション・心理社会的支援

    デイケアや就労支援など、社会参加を後押しするプログラムを活用することで、生活リズムを整え、対人関係のスキルを回復していきます。カウンセリングや認知行動療法を通じて、不安やストレスへの対処法を学ぶことも有効です。
    統合失調症は長期的なケアが必要になる場合が多いため、自立支援医療や障害者手帳、年金制度などの社会資源を上手に活用することが重要です。当院でも、患者様やご家族の状況に合わせて、これらの制度の申請や利用方法をサポートさせていただきます。

このような症状があれば受診を

  • 「聞こえるはずのない声や嫌な内容の言葉が聞こえることがある」
  • 「誰かが自分を陥れようとしていると感じ、強い不安に駆られる」
  • 「自分の考えが他人に漏れている、または他人の思考が頭に入り込む感じがする」
  • 「突然引きこもりがちになり、家族や友人とも話さなくなった」
  • 「現実感が薄れ、日常生活がうまく回らなくなってきた」

上記のような症状が6ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたすようであれば、早めに精神科を受診しましょう。
当院では、患者様やご家族の不安をしっかりと受け止めつつ、社会資源も活用し、一人ひとりに合わせた治療プランを提案いたします。長い経過をともに歩みながら、安心して暮らせる生活をサポートします。