パニック障害

パニック障害のよくある症状

  • 突然、激しい動悸や息苦しさ・めまい・発汗などの症状に襲われる(パニック発作)
  • また発作が起こるのではないかと常に不安で落ち着かない(予期不安)
  • 発作が起きる場所や状況を避けるようになり行動範囲が制限される(広場恐怖)
  • 発作が起きた際「死んでしまうのでは」と感じるほどの恐怖を覚える
  • 仕事や人付き合いにも影響が出て、気分が落ち込むことが増える

パニック障害とは

パニック障害は、突然の強い不安発作(パニック発作)が繰り返し起こる状態です。発作時には動悸、息苦しさ、めまい、発汗、吐き気 などの症状が現れ「このまま死ぬのではないか」といった強い恐怖を感じることがあります。
この恐怖体験をきっかけに「また発作が起こるのでは」という予期不安が生じ、発作を経験した場所や状況を避ける広場恐怖へと発展することがあります。その結果、外出が困難になり、社会生活に影響を及ぼす場合もあります。
適切な治療により症状のコントロールでが可能です。薬物療法(抗うつ薬・抗不安薬)や認知行動療法(CBT)によって発作の頻度を減らし、不安や恐怖心を和らげることが期待できます。

パニック障害の有病率

日本におけるパニック障害の有病率は、研究や調査によって差はあるものの、約1%程度とされています。1)決して稀ではなく、誰にでも起こりうる可能性があります。
初めてパニック発作を経験した際、苦しみから救急車を呼ぶ方も少なくありません。しかし、身体的な検査をしても異常が見つからないケースが多く「気のせい」「自律神経の乱れ」と片付けられ、精神科・心療内科の受診が遅れることがあります。

パニック障害の原因

パニック障害の原因はさまざまな要因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。主な要因として、以下が挙げられます。

  1. 1.遺伝的・生物学的要因

    • 脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスの乱れ
    • 遺伝的な要因
  2. 2.心理的要因

    • 強いストレスやトラウマ(仕事、家庭、学校など)
    • 真面目で責任感が強い、完璧主義など、ストレスを抱えやすい性格傾向
  3. 3.環境的要因

    • 不規則な生活リズムや過労、睡眠不足
    • コーヒーやアルコールなどの過剰摂取、喫煙
    • 身近な人の病気や失業など生活環境の変化

これらの要因が重なることで、身体の緊張が高まったり、不安を感じやすい状態になったりすると、パニック発作が起こりやすくなると考えられています。

パニック障害の詳しい症状

動悸や息切れ、めまい、発汗などは、だれでも不安を感じた際に現れうる身体反応です。しかし、パニック発作では非常に強い症状が急激にみられます。
発作時の恐怖感は「このまま死んでしまうのでは」と思うほどで、平均的には数分から30分程度続く場合が多いです。また、パニック発作を繰り返すほど不安が増幅し、発作の頻度や強度が高まって慢性化しやすい傾向があります。
「また発作が起こるかもしれない」という予期不安から生活が制限されると、外出や人付き合いを避けるようになり、引きこもりがちになるケースもあります。さらに、広場恐怖が進むと「電車やバスに乗る」「エレベーターに乗る」「人が多い場所に行く」など、日常のあらゆる場面で強い不安を覚えるようになり、社会生活に深刻な影響が及ぶため、早期発見・治療が重要です。

パニック障害の診断

パニック障害の診断は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)などのガイドラインにもとづいて行われます。医師が問診や症状の経過から以下を踏まえ、総合的に判断します。

  • 予測不能な繰り返しみられるパニック発作の有無
  • 発作後の1ヶ月以上にわたる持続的な不安(予期不安)や生活制限
  • 広場恐怖の有無
  • 他の身体的な病気や精神的な病気では説明できない症状かどうか

身体的な病気の可能性が除外できるかどうかも重要なポイントです。検査の結果、身体に異常がないにもかかわらず、症状が繰り返し起こり、生活に支障をきたしている場合はパニック障害と診断される可能性が高くなります。

パニック障害の治療

パニック障害は比較的お薬が効きやすいとされています。早めの治療介入によって、日常生活への支障を最小限に抑え、社会復帰や再発予防を目指すことが大切です。

  1. 1.薬物療法

    • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを用いて、パニック発作を軽減・予防します。
    • 発作が続くほど慢性化しやすいため、まずは薬物療法で発作を抑え、予期不安を和らげることで生活への影響を少なくすることが目標です。
  2. 2.認知行動療法(CBT)

    • 発作が安定してきた段階で、認知行動療法などの心理療法を取り入れることも有効です。
    • 「身体症状を危険信号と結びつけすぎない」「不安が起きても対処できる」という思考パターンを身につけ、不安や恐怖を徐々に減らしていきます。

当院では、患者様一人ひとりの状況を丁寧に把握し、ガイドラインに沿った必要最小限の薬物療法と、安定期に応じた認知行動療法を組み合わせて治療を行っています。

このような症状があれば受診を

  • 「突然の激しい動悸や息苦しさに襲われ、『死ぬかも』と感じたことがある」
  • 「また発作が起きるかも…と不安で仕方なく、外出を控えるようになった」
  • 「電車やバスに乗るのが怖い、人混みに行けない」
  • 「身体の検査では異常がないと言われたが、激しい恐怖発作が何度もある」

このような症状が続くと、日常生活の質が大幅に低下します。パニック障害は、早期に適切な治療を受けることで改善が期待できる病態です。当院では、パニック発作や不安を抑え、再び安心して外出できるようサポートいたします。

  • 1) 「厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究.環境中微量化学物質に対する感受性の動物種差、個人差の解明:高精度リスク評価法の開発(総括研究報告書).加藤貴彦.平成14(2002)年度総括研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース)(2025年2月19日に利用)
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2002/000232/200201072A/200201072A0002.pdf