睡眠障害

睡眠障害のよくある症状

  • なかなか寝つけない(入眠障害)
  • 夜中に何度も目覚め、もう一度眠ろうと思っても眠れない(中途覚醒)
  • 夜明け前など朝早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 十分な睡眠時間をとっているのに熟睡した感じが得られない(熟眠障害)
  • 日中に強い眠気や過度な倦怠感がある(過眠症)
  • 寝ようとすると脚がむずむずして眠れない

睡眠障害とは

睡眠障害は大きく分けると「不眠症」と「過眠症」の2つです。どちらも睡眠と覚醒のバランスが崩れることで生じます。
不眠症は睡眠時間の不足や睡眠の質の低下がみられ、精神医療の領域で治療が必要になること場合が多い症状です。
過眠症は、夜間の睡眠時間が十分にもかかわらず、日中にたえがたい眠気が生じ、生活に支障をきたします。代表的な過眠症状として「ナルコレプシー」があります。
いずれの睡眠障害も生活の質を大きく低下させ、放置すれば仕事や学業、対人関係にも深刻な影響を及ぼしかねません。睡眠障害は精神科・心療内科を含む専門医療機関での適切な診断と治療が必要です。

睡眠障害の有病率

日本人における「不眠症状の有症状率は15〜25%」1)と言われています。
過眠症状については、ナルコレプシーにおいては「日本人の有病率0.16%(600人に1人)」2)と報告されています。不眠症状と比べると有病率は低いですが、2000年の厚生労働省保健福祉動向調査では「眠ってはいけないときに起きていられない」人の割合は3.2%3)であり、実際に過眠症で困っている人は決して少ないとはいえないでしょう。
睡眠障害全般では「睡眠の問題がない」と回答している人は全体の0.2%3)であることから、何らかの睡眠の問題を抱える人は多いと考えられます。

睡眠障害の原因

睡眠障害の原因は多岐にわたり、いくつもの要素が複合的に影響します。代表的な原因としては、以下が挙げられます。

  1. 1.ストレスや生活習慣

    • 日常生活のストレス(仕事・育児・対人関係など)
    • 生活習慣の乱れ(不規則な食習慣や昼夜逆転の生活など)
    • 運動不足、活動性の低さ
    • カフェイン、ニコチン、アルコールの摂り過ぎ(覚醒を促す嗜好品)
    • ホルモンバランスの変化
  2. 2.睡眠環境

    • 寝る前のスマホやPCのブルーライト
    • 寝る部屋の温度や湿度、光、音が適切でない
  3. 3.病気や症状の影響

    • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

      睡眠中に呼吸が止まる、浅くなるなどがみられ、いびき・日中の強い眠気などの症状が現れます。

    • むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

      むずむず、ざわざわするような脚を動かしたい衝動や不快感がみられ、寝つきが悪くなります。

    • 周期性四肢運動障害

      主に脚が意図に反して動いてしまう症状がみられ、睡眠途中で目覚めやすくなります。

    • 中枢性過眠症

      脳の覚醒維持をつかさどる機能に何らかの異常があるナルコレプシー、特発性過眠症などが挙げられます。

    • 睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症など

      睡眠中に歩き回る、大きな声で寝言を言ったり、大きく体を動かしたりするなどがみられます。

    • うつ病

      「うつ病患者の約8割に不眠が、1割に過眠(日中の眠気や長時間睡眠)がみられる」1)とあり、うつ病に睡眠障害が伴うケースは多くみられます。

    • がんなどの痛みをともなう病気

      痛みのために熟睡が妨げられる場合があります。

睡眠障害の詳しい症状

  1. 1.不眠症状

    不眠症状は、以下の4つに分けられます。

    • 入眠困難:寝つくまでに時間がかかる
    • 中途覚醒:夜間に何度も目が覚めてしまう
    • 早期覚醒:予定より早い時刻に目覚めてしまう
    • 熟眠感欠如:よく眠れた実感がない

    これらの症状が慢性的に続くと疲労が蓄積し、日中の集中力や気力が大幅に低下するだけでなく、うつ症状の一因となる場合もあります。

  2. 2.過眠症状

    過眠症状は、夜に十分な睡眠をとっているのにもかかわらず、日中にたえがたい眠気や居眠りが起こり、仕事や学業、運転などに支障をきたす点が特徴です。
    特にナルコレプシーでは、大笑いなどの情動に伴い、全身に力が入らなくなって倒れ込んでしまうなどの脱力発作(カタプレキシー)が起こる場合もあります。転倒事故などのリスクにつながり、社会生活に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

睡眠障害の診断

睡眠障害の診断には、睡眠に関する問診、睡眠日誌の確認のほか、必要に応じてポリソムノグラフィー検査(睡眠ポリグラフ検査)などの検査を行います。
不眠症は不眠症状があり、日中の機能障害が1つ以上、認められる場合に診断されます。
ナルコレプシーは、症状の詳細や過眠症状の程度、日中に支障をきたしていることなどの問診や睡眠日誌の確認。睡眠ポリグラフ検査、反復睡眠潜時検査(MSLT)などの検査をもとに診断します。

睡眠障害の治療

睡眠障害の治療では、原因や背景に応じてさまざまなアプローチが取られます。一般的には、生活習慣や睡眠衛生の指導、薬物療法、認知行動療法(CBT)などを組み合わせて行います。

  1. 1.生活習慣の改善

    規則的な就寝・起床のリズム、日中の適度な運動、昼寝を控える、夜間のカフェインやアルコール制限、就寝前のスマホ使用を控えるなど、基本的な睡眠衛生の確立が第一歩です。

  2. 2.薬物療法

    不眠症では睡眠薬が使用されることがありますが、長期連用による依存や過鎮静のリスクにも注意が必要です。また、過眠症の一部には覚醒状態を保つ薬剤が処方されることがあります。
    当院では、日本精神神経学会主催の「精神科薬物療法研修」を修了した院長が、一人ひとりの状態に合わせて必要最小限の薬物療法を行う方針です。

  3. 3.認知行動療法(CBT)などの精神療法

    不眠や過眠の背景には、ストレスや思考の偏りが影響している場合も多いため、薬物療法だけでなく、認知行動療法を主体とした精神療法を組み合わせることが望ましいです。認知行動療法では、睡眠に関する不適切な認知や行動習慣を見直し、より良い睡眠パターンの獲得を目指します。

  4. 4.その他の治療

    睡眠時無呼吸症候群などの身体的原因がある場合は、それぞれの病気や症状を専門的に診療する医療機関での治療が必要です。むずむず脚症候群では薬物治療や生活指導が中心となります。状況に応じて専門的な診療を行う医療機関と連携し、総合的な治療を進めていきます。

このような症状があれば受診を

  • 「眠れなくて辛い」
  • 「昼間の眠気がひどくて仕事や勉強に集中できない」
  • 「寝てもぐっすり眠れた気がせず憂うつだ」

上記のような状態が続いている場合、放置するとさらに症状が悪化し、うつ病やその他の精神疾患を誘発することもあります。また、不適切な自己判断で睡眠薬を漫然と使い続けると、睡眠薬依存症や過鎮静を招く恐れも否定できません。不眠や過眠の背景に、精神的な病気や身体的な病気が潜んでいるケースもあります。
できるかぎり精神科の診療を専門とする医師のもとで、心と身体の両面から原因を探るのが良いでしょう。